6月19日は「食育の日」ということで食と健康について、新潟県立大学 人間生活学部 健康栄養学科の村山稔子准教授にお話をうかがいます。

 

■「食育の日」にあらためて食生活を確認してみよう

 

―「食育」という言葉をここ数年よく聞くようになりましたが、あらためてどういったものか教えてください。

 

「食べること」は、からだをつくる上でも、健康を維持することや病気を治療していく上でも非常に重要です。さらに、毎日楽しく心豊かに過ごす上でも「食べること」はとても大切です。

食に関する教育を「食育」として、2005年に食育基本法が制定され、食に関する教育が進められてきました。「食育」は子どもの時から行うことがとても大事なので、大人もみんなで正しい食育の知識を身に着ける必要があるのです。

さらに、6月を「食育月間」としているほか、毎月19日を「食育の日」として国を挙げて取り組み、さまざまな活動を進めています。

 

―食事と健康の深い関係についてはたびたび取り上げてきましたが、今回は私の食生活についてアドバイスをいただきたいなと思います。

 

 例えば昨日の食事ですが…

 【昼食】濃厚味噌ラーメンに野菜をトッピングした「濃厚野菜味噌ラーメン」

 【夕食】タコの刺身、アジフライ2枚、千切りキャベツ、ビール

 

 基本的には買ってきたり、簡単なものであれば自分で作ったりということですね。

 食べに行ったり飲みに行ったりすることもありますが、自粛生活ということで控えています。

 ほぼ毎日2食です。本当は朝・昼・晩の3食を食べるべきなのでしょうが、朝食は抜きがちです。

 食事で気をつけていることは「減塩」で、味噌ラーメンですと、塩分の吸収を抑える野菜をまず食べること。

 ラーメンの汁は最後まで飲み切らないということを心掛けています。

 

 ちなみに味噌ラーメン1杯に塩分がどれくらい入っているかご存知ですか?

 

―5gくらい入っているのではないでしょうか?

 

 もっと入っていると思います。濃厚味噌ラーメンですと、8gくらい入っているのではないかと思います。

 

―成人1日が摂ってもいいの塩分量は男性7.5g、女性6.5gと言われていますから超えてしまっていますね。

 

 そうですね。最後まで汁を飲まないとしても7gくらいは塩分を摂取しているのではないかと思います。

 野菜が多いラーメンを選んでいるということは素晴らしいことなので、なるべく残す汁の量を増やしていくことで体が喜ぶ塩分に近づいていくと思います。一方、夕食は塩分控えめでよかったと思います。

 

―お刺身も好きですし、揚げ物も結構好きなのです

 

 揚げ物は意外と塩分が少ないですし、タコの刺身はお醤油のつけかた次第で塩分が減らせます。

 

―お刺身やお寿司に醤油をたっぷりつけるのが苦手なので、少ししかつけないです。

 

 それであれば、塩分についてはバッチリです。あとは主食、野菜がもう少し追加になるといいですね。

 お昼は主食がラーメンで、味噌ラーメンですからお肉も少し入っていると思いますし、主菜と副菜の野菜が入っていてバランスとしてはいいと思います。お昼は塩分が多いというところだけが問題かなと。

 

 一方で夕食については、ご飯や麺といった主食がなかったということですよね。

 夜に炭水化物を摂りすぎると太るという考えの方もいるかと思いますが、おにぎり1個分くらいのご飯をプラスし、アジフライを2枚から1枚半にしてもらってタコの刺身を半分にして、さらにそこに野菜料理を1品足してもらう。そうすると、よりバランスが良くなります。

 食事は主食・主菜・副菜をそろえることが重要です。また、3食きちんと食べてもらえると嬉しいです。そして、あとは減塩。この3つがポイントになります。

 

■健康的な食事をあらためて確認しよう

 

―健康的な食事がいかに大事か、どんなポイントがあるかということを教えていただけますか?

 

 私たちのからだは、私たちが食べたものでできています。

 このようにお話をしたり、何かしたりするのも、すべて自分が食べたものをもとに行われているわけです。

 いかに楽しく元気に将来も生活していくかと考えると、毎日食べることって積み重ねでとても大事だと思います。

 バランスの良い食事、体が喜ぶ食事として私がお勧めしたいのは、3食欠かさず食べることと、ご飯やパン、麺といった主食、肉・魚・卵・豆腐といったたんぱく質の多い食材によるおかずの主菜、野菜中心の副菜という3つが揃った食事を心がけることです。

 さらにバランスをとるために、主菜は1品にするのがポイントで、野菜は100g以上がよいと言われています。

 

―野菜100g以上というのは結構多いですよね?

 

 そう思うかもしれませんが、大きめのトマト半分で100gくらいとか、千切りキャベツだとカット野菜として袋入りで売られているものは大体1袋150gくらいです。

 生野菜のカット野菜を利用するときに追加してほしいのは今の時期だったらトマトです。小松菜などの青菜や、ブロッコリー、ニンジン、ピーマンもよいです。

 

―いわゆる緑黄色野菜ですね。

 

 そうです。野菜では、緑黄色野菜をしっかり摂ることが大事になります。

 野菜料理は作るのが面倒だというのが、野菜を摂らない人の理由として多く挙げられているのですが、最近はカット野菜や冷凍のブロッコリーやホウレンソウもありますし、既製品のおかずを組み合わせてもらってもいいと思います。このような工夫で、今よりも野菜を増やすことができて、バランスの良い食事になると思います。

 

―心掛けていきたいと思います。また減塩については?

 

 減塩というと、何からやったらいいのか?とか、おいしくなくなるのでは?というイメージがあるかもしれませんが、素材の味を味わうような気持ちで食事をしていくといいのではないかと思います。

 例えば、お刺身は醤油を少しにすると、魚の味をしっかり味わうことができると思います。

 また、野菜もダシをうまく生かすといいですね。煮物は醤油をたくさん使って醤油の味で食べるというよりは、 ダシをきかせることで、素材の味を引き出すような気持で料理して食べるというのがいいと思います。

 手っ取り早い方法として、具だくさんの味噌汁がお勧めです。

 

―完璧にやるのは難しそうですが、何かコツはありますか?

 

 例えば、具だくさんの味噌汁ですと、今の時期はトマトを入れてもおいしいです。味噌汁ではなくても、コンソメを入れたミネストローネ風とか具だくさんでおいしいと思いますよ。 具だくさんになると汁自体が少なくなり、水分が少ない分、味噌など調味料が少なく済みます。そんなに味は変わらないですが、塩分が減らせるのです。

 またおかずは煮物ばかりにならないように、煮物など味の濃いおかずには、少し薄味でもおいしく食べられるおかずを組み合わせるといいと思います。

 先ほどのトマトはそのままでもおいしく食べられますよね。サラダやおひたしを組み合わせるなど、おかずの組み合わせを変えるだけで減塩になります。

 ほかに、インスタントラーメンを作るときはスープの素を少しずつ残すような習慣をつけるとよいと思います。

 

―粉末スープを全部入れるのではなくて少し残すということですか?

 

 そうです。少しずつ残していって、出来れば半分くらいまで減らせるといいですね。

 特に塩分は慣れなので、少しずつ減らしていって慣れていくといいと思います。

 日頃から濃い味のものばかりを食べていると物足りなく感じてしまうでしょうが、

 麺の味を楽しむような気持ちで試していただければと思いますね。

 

―すぐに、すべてをやり遂げるのは難しそうですが、積み重ねていくことが重要なのでしょうね。

 

 まずは、できることから始めるとよいと思います。

 きょうはしょっぱいものを食べてしまったなと思ったら、翌日、気をつけてもらえばいいと思います。

 ほんのちょっとずつ控えるだけで、それが積み重ねとなり習慣となって、次のことができるようになると思います。

 

―積み重ねることで将来、大きな影響が出てくるということですよね?

 

 ちょっとずつ減らしていって、知らないうちに、いつの間にか薄味になっていたという感じになってもらえると

 いいのではないと思います。

 

―それでは、皆さんにメッセージをお願いします。

 

 食事のとり方次第で、今よりも元気に過ごせるはずです。

 みんなで楽しく過ごしていくために、3食欠かさず、主食・主菜・副菜と野菜も忘れずに取り揃え、

 塩分はちょっとずつでも減らしていただければと思います。