「これ塩分どれくらいだろう?」を意識してみましょう。

 

第6話は「減塩」の大切さについて

管理栄養士の長谷川美代(はせがわみよ)さんにお話しを伺いました。

長谷川さんは新潟大学大学院医歯学総合研究科血液内分泌代謝内科学分野の客員研究員でもいらっしゃり、普段は大学で糖尿病患者の栄養関連の研究を行っている他、大学・専門学校で非常勤講師を務めています。また糖尿病患者への栄養指導も行っていらっしゃいます。

 

Q.そもそも塩分の摂り過ぎることはどのような問題があるのですか?

塩分の摂り過ぎは高血圧の原因になります。高血圧は長く続くことによって様々なリスクが生まれてきます。

例えば、全身の血管や心臓、腎臓に負担が掛かり、動脈硬化を起こしてしまいます。動脈硬化で脆くなった血管が破れる・詰まるなどになると、脳卒中や心筋梗塞につながります。最近よく耳にするようになってきた、慢性腎臓病(CKD)への危険性もあります。

高血圧や初期の糖尿病などは、「サイレントキラー」と呼ばれるような、自覚症状なくどんどん進行していってしまうような危険性もあり、注意が必要です。

 

.以前から減塩の大切さは訴えられていますが、現在はどのような状況なのでしょうか。

徐々に減って来てはいます。しかし、「日本人の「食事摂取基準2015年版」の中で、生活習慣病の一次予防のために当面の目標とすべき塩分摂取量は1日男性8g未満、女性7g未満とされているのですが、「国民健康調査」によれば、現在目標より2g近く多く塩分を摂取している結果が出ています。

カップ麺などでは全部スープを飲んでしまうと、5g近い塩分を摂ってしまうものもありますので、食べ方に意識が必要になってくるでしょう。

 

Q.新潟県は塩分摂取が多い県という結果が出ていますが、どのような特徴があるのでしょうか?

「県民栄養調査」によれば、新潟県で塩分摂取が多い人の特徴10項目が挙げられます。

 ・ 満腹になるまで食べる

 ・ 主食を重ねて食べる

 ・ カレーライス・丼物・麺類を週3回以上食べる

 ・ 煮物を重ねて食べる(1日4皿以上)

 ・ 漬物を1日2種類以上食べる

 ・ 塩蔵品を1日1品以上食べる

 ・ 麺類のスープを1/3以上飲む

 ・ 濃い味付けを好む

 ・ 外食が多い(週2回以上)

 ・ 毎日お酒を飲む(塩分の多いつまみが多い)

※ 新潟県民760人の食生活調査と尿中ナトリウム量から算出した推定食塩摂取量をもとに解析(新潟県立大学/2013-2015)

「新潟県栄養政策策定及び評価体制構築のためのデータ分析ワーキング」作成(2015))

 

などが挙げられます。

これらに該当する方は、少しずつ改善していくことを意識していくことが大切です。

 

Q.食事の中で、塩分を控えるコツはありますか?

塩味の代わりに、酸味や辛味、旨味などを代替えしてみましょう。

「味が薄いからい塩を掛けよう」ではなく、例えば私はお味噌汁が薄いと感じたら唐辛子を掛けるようにしていますし、鶏肉を塩に加えてカレー粉をまぶして焼くなどしています。カレー粉を加えることで塩分減らせます。

先程、煮物の話をしましたが、煮物でも出汁を良く取ることによって美味しく、塩分の少ない煮物を作ることもできます。

また、いまは減塩調味料も多く出ていますので、こちらを使用することも良いと思います。

 

1食の中で、1品だけ濃い味付けにして、他を薄めにすることもオススメしています。

加工食品はどうしても塩分が多いものが多いので、注意しましょう。

 

Q.他に効果的なことがあれば教えて下さい。

 

「カリウム」を摂るようにすることも大切です。

カリウムは高血圧の原因であるナトリウムを体外に排出してくれる作用があります。

血圧の上昇を防いだり、心臓病、脳卒中、循環器病の予防にも効果的です。

野菜に多く、他にも果物、海藻、豆類にも含まれていますので、意識して摂るようにすると良いでしょう。

ただし、カリウムは腎臓の悪い方には逆効果になりますので、注意が必要です。

 

Q.野菜が大切なのですね。1日どれくらい摂れば良いというのはありますか?

350gが目標です。そのうち色のついた野菜を120gほど摂って頂ければと思います。

個人差はありますが、両手を拡げて乗る量が約100gと言われています。350gというと結構な量となりますので、やはり毎食摂るようにした方が良いですね。

毎食、主食、主菜(タンパク質)、副菜(野菜)のバランスの良い食事を心掛けて下さい。

 

Q.いつくらいから塩分を意識した方が良いのでしょうか?

若い方でも血圧の高い方はいます。血圧を測ったことがなく、本人は分かっていなかったというケースもあります。若いうちから減塩を心掛けると、年を重ねても高血圧のリスクは軽減されます。

動脈硬化は自然にできていくものですので、若い頃から一生の長いスパンで、減塩を意識していくことが肝要です。

 

先程の10項目で引っ掛かった項目を改善して、塩分摂取を減らす。そして野菜を1皿摂る。

ここから始めてみて下さい。

 

Q.最後にメッセージを頂けますか

繰り返しになりますが、減塩は若いうちから意識していった方が、動脈硬化も進まないので、将来的に高血圧になりにくくなります。高血圧は非常に怖い病気で、予備軍も含めると国民の2人に1人はなると言われています。摂取目標である男性8g未満、女性7g未満という数値をまず知ってもらい、自分の食事の、どの品がどのくらいの塩分なのかを考える機会を設けてみて下さい。

 

なお5/11(土)のBSNテレビお昼の情報番組『なじラテ。』でも

長谷川先生にご出演頂き、より詳しい内容についてスタジオでクイズを交えてお伝えします。

お楽しみに!