2021年4月21日放送

パートナーシップ宣誓制度導入1年の新潟市 同性婚を考える

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新潟市は去年、新潟県内の自治体としては初めて、同性同士のカップルをパートナーとして認めました。制度導入から1年、市内に住むLGBTの人たちの取材を通して、現状と新たな課題を見つめます。【新潟から、SDGs】

【記者】「手はつないでいらっしゃるんですね」

固く結ばれた手は、交際を始めて8年の間、変わりません。新潟市で生活する女性2人。カナさん(仮名・30代)はバイセクシュアル、マイさん(仮名・30代)はレズビアン、いわゆるLGBTです。人生を共にする2人は、新潟市から「夫婦と同じである」と認定を受けています。

【カナさん(仮名)】「気持ちの面で安心感というのは、やっぱりあるかなと感じています」

1年前。新潟市はLGBTなど性的少数者のカップルで、夫婦のように支え合う2人を自治体が認定する「パートナーシップ宣誓制度」を始めました。カナさんとマイさんは、新潟市から第1号で認定を受けました。

【カナさん(仮名)】「婚姻届の提出もこんな感じなのかなとか、2人で書くということが今まではなかったので、一緒にやっている共同作業がうれしかったです」
【マイさん(仮名)】「やっと公的な、自分たちの安心できるような保険を手に入れたかなというような、ちょっと安心できるような感覚で今います」

この制度は、新潟県内の自治体では唯一、新潟市が導入。20日までに9組のカップルが宣誓しました。自治体がパートナー同士として認めることで、家族として市営住宅への入居や、生命保険の受取人をパートナー名義にすることが可能となりました。

【マイさん(仮名)】「家族に『パートナーシップ(制度)をとったよ』と報告してから、ちゃんと夫婦として扱ってくれるような気がします」

一方で...。

【新潟市男女共同参画課 笹川真由美課長】
「性的少数者に対する多様性への理解が進むというところを目指しているものですので、直接的な効果というのはないかもしれないですけれども、そういった社会がだんだんつくられていくのかなと思います」

制度の受領カードに書かれるのは、「法的な効力を有するものではありません」の一文。日本の法律では現在、同性同士の結婚は認められていません。しかし、社会はパートナーシップ制度よりも前へ動き始めています。

3月17日に札幌地裁は、同性同士の結婚を認めないのは憲法に違反しているという判決を、全国で初めて出しました。

「パートナー」から「夫婦」へ。新潟市で同性パートナーと暮らし、結婚を望む佐藤さん(仮名・30歳)です。

【佐藤さん(仮名)】「女性とお付き合いしていることだけを言えば、(私は)レズビアン」

10年間、パートナーの女性と交際。一生をともにする約束をし、ウェディング写真も撮影しました。佐藤さんは札幌での裁判の行方を注視していました。

【佐藤さん(仮名)】「やっとそういう流れがきたんだな。そういう判決が出て、いいも悪いも、みんなが話題に出すことがすごくいいことだと思っているので」

【佐藤さん(仮名)】「同性婚ができるんであれば、全然それを使って両親にも、男女のカップル同様に結婚の報告をしたりできるのかなと思います」

結婚を望む一方、佐藤さんは新潟市のパートナーシップ宣誓はしていません。

【佐藤さん(仮名)】「メリットが少ない。『パートナーですよ』というのも、自分たちの中でそうだって決まっているんであれば、別に特段必要ない」

そして、この制度では乗り越えられない将来への不安がありました。

【佐藤さん(仮名)】「家の相続とかどうなるんだろう」
法律では、配偶者ではない同性パートナーは法定相続人になっておらず、遺産を相続する場合、遺言書を書いたり、養子縁組をして法律上親子になったりしなければなりません。

ただ、どの場合も親が事情を知らない場合、トラブルに発展しかねません。佐藤さんは、パートナーと養子縁組を結ぶことも検討しているそうです。

【佐藤さん(仮名)】「そこは確かに突き詰めていくと違和感はあるんですけど、本当にそれ(養子縁組)をせざるを得ないくらいそれしか方法がない」

LGBTへの理解を深める活動をし、自身もゲイの黒田隆史弁護士は、法律を整えるのは国であっても、地方から空気を変えていく流れを加速させるべきと話します。

【黒田隆史弁護士】「自治体・経済団体が率先して取り組むことで、少しずつ変わっていく。上(国)からではなくて、下(地方)から変えていくものだろうと思っています」

そして、パートナーシップ制度導入は、その入口だと話します。

【黒田隆史弁護士】「パートナーシップ制度が作られて運用されていく中で、同性婚の必要性、必要となる事実・状況がどんどん明らかになっていくだろう」

何十年も先まで、どう人生を歩むのか。同性カップルは、すぐに婚姻届を提出できるカップルにはない、生活のしにくさを感じています。

【マイさん(仮名)】「一緒にいたい人と一緒にいれて、それが社会的に保障を受けられるというのは、すごく当たり前でなくちゃいけないことなのに...」

【佐藤さん(仮名)】「なんでこんなに面倒くさいんだろう。いろいろな時間とか手間とかかかるけど、婚姻届、あの紙が一枚あれば、全部解決ではないんですけれども、おおよそは解決するんじゃないかな」

国内に住む11人に1人が、LGBTと言われています。一生を一緒に過ごしたいと思う人たちが、当たり前に人生設計を描ける世の中へ。私たち一人一人が理解する空気を広めることが求められます。

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