2021年4月27日放送
微生物の力で生み出す"きれいな水"地域の課題解決に
薬品などを使わず環境にも生き物にも優しいきれいな水を、微生物の力で生み出す新しい技術を取材しました。
生きていく上で欠かせない、きれいな水。きれいな水を必要としているのは、私たちだけではありません。鮮やかな色彩で「泳ぐ宝石」とも言われる錦鯉。より美しく健康な錦鯉を育てる上で、無くてはならないものの一つが「水」です。
鯉を育てる養鯉場の水は、何もしないと錦鯉の排泄物で汚れてしまいますが、新潟県長岡市にある養鯉場の水はきれいですよね。その秘密は、ある装置にあります。
【長岡錦鯉養殖組合 野上久人副理事長】「最初、設置してもらったときに、正直言ってどこまで違うのかなっていうのがあったが、これを付けて次の日丸1日で、なおさら水の輝きが出ました」
いったい、どんな仕組みで水を輝かせているのでしょうか。装置を開発した、長岡技術科学大学を訪ねました。
【長岡技術科学大学大学院 山口隆司教授】「魚を飼うときに魚がおしっこをして水が汚れるが、それを微生物を使った、バイオリアクターという微生物で水をきれいにする」
水の美しさを保っていたのは、微生物です。「下降流懸架式スポンジろ過器」、略して「DHS」と呼ばれるこの装置。特殊な形のスポンジの中には、300億匹もの微生物が住んでいます。スポンジの上から錦鯉の排泄物で汚れた水を通すことで、微生物がろ過してくれるのです。
DHSを設置する前の養鯉場の水は、薄い緑色をしています。この養鯉場にDHSを1週間設置すると、水は透明に。その差は一目瞭然です。見た目はもちろん、美しくなっていますが、魚にとっても「すみやすい、きれいな水」になっているそうです。
【山口隆司教授】「きれいかきれいじゃないかは、そこにすむ魚にとって毒であるか毒でないか。(DHSは)魚が出すアンモニアを酸化させて硝酸というものに変える装置。アンモニアの毒よりも硝酸は毒性が100分の1に下がるので、水は魚にとってすみやすい」
錦鯉の排泄物が混ざった水にはアンモニアが含まれていますが、微生物が住んでいるスポンジ=DHSを通ることでアンモニアが酸化され、毒性が低い「硝酸」になります。
【山口隆司教授】「(水質を保つために)薬品を使うと化学的な何か悪いものができるだとか、化学薬品を作るためのエネルギーが必要だったりします。それに比べて、微生物は微生物が汚れを食べて育ったら、また微生物の体ができて、新しい微生物が次の汚れを食べて育って繰り返し使える」
DHSを取り付けた水槽は、最長で600日間水を取り替えなくても魚が元気に育ったということです。微生物を使った水の循環システムは環境にとってだけでなく、そこにすむ生物にとってもプラスの効果があるそうです。
【長岡錦鯉養殖組合 野上久人副理事長】「鯉の動きが違いましたし、えさの食べ方がいつもよりも全然、えさを食べるようになって、より肉が付くようになった」
通常、錦鯉はより大きく育てるため、水槽よりも広い野池などで一定期間飼育しますが、DHSを設置した水槽で飼育した錦鯉はえさをたくさん食べるため、1年間水槽の中で飼育することができます。
【山口隆司教授】「どうして大きくなりやすいかというと、錦鯉が病気にかかりにくくなります。外の水を使うと、外にあるウイルスとか病気を川や海経由で魚にいきます」
去年1年間、野上さんがこの装置を使って育てた錦鯉は、長岡市の大会で見事優勝しました。DHSを使った水の循環システムは、環境にも生物にも良い効果をもたらす優れものですが、課題もあります。
【山口隆司教授】「課題は現在、錦鯉を飼っている業者と仕事をする機会を得るというのが課題」
現在、長岡市の養鯉場でDHSを設置しているのは、まだ2か所だけ。養鯉業者のニーズを把握したり、改善点を洗い出したりして改良するために、もっと多くの施設に使ってもらいたいと考えています。そこで、新しい技術と企業をつなごうと動き出したのが長岡市です。
【長岡市商工部バイオエコノミー担当 斉藤真紀課長】「地元で商売されている方、錦鯉だったら錦鯉をつくられている方がいる中で、その中に地域の課題がたくさんある。その課題を先生方につなげる・出会うことによって、今回の取り組みが生まれた」
行政が専門家と企業の間に入り、課題解決の場を双方に提供しています。こうした自治体と民間の企業の協力は今後、国や世界が一丸となって環境問題に向き合っていく上で非常に重要です。
【長岡市 斉藤真紀課長】「企業は企業で戦うという時代ではなくなってきている。地域の課題と長岡にある技術をうまく結びつける場を、市が設けることによって新しいものが生まれてくる」
微生物を使った水の循環システムは錦鯉の養殖だけでなく、水を扱う様々な分野での活用が期待されています。
【山口隆司教授】「新潟と言えばコメとかお酒とか食とかあるので、食とものづくりを合わせて、新しい産業にしていきたい」
信濃川や阿賀川が流れ、豊富な水資源でさまざまな産業を発展させてきた新潟。地域資源をうまく活用し、地域の課題解決につなげる新しい取り組みに今後も注目です。
生きていく上で欠かせない、きれいな水。きれいな水を必要としているのは、私たちだけではありません。鮮やかな色彩で「泳ぐ宝石」とも言われる錦鯉。より美しく健康な錦鯉を育てる上で、無くてはならないものの一つが「水」です。
鯉を育てる養鯉場の水は、何もしないと錦鯉の排泄物で汚れてしまいますが、新潟県長岡市にある養鯉場の水はきれいですよね。その秘密は、ある装置にあります。
【長岡錦鯉養殖組合 野上久人副理事長】「最初、設置してもらったときに、正直言ってどこまで違うのかなっていうのがあったが、これを付けて次の日丸1日で、なおさら水の輝きが出ました」
いったい、どんな仕組みで水を輝かせているのでしょうか。装置を開発した、長岡技術科学大学を訪ねました。
【長岡技術科学大学大学院 山口隆司教授】「魚を飼うときに魚がおしっこをして水が汚れるが、それを微生物を使った、バイオリアクターという微生物で水をきれいにする」
水の美しさを保っていたのは、微生物です。「下降流懸架式スポンジろ過器」、略して「DHS」と呼ばれるこの装置。特殊な形のスポンジの中には、300億匹もの微生物が住んでいます。スポンジの上から錦鯉の排泄物で汚れた水を通すことで、微生物がろ過してくれるのです。
DHSを設置する前の養鯉場の水は、薄い緑色をしています。この養鯉場にDHSを1週間設置すると、水は透明に。その差は一目瞭然です。見た目はもちろん、美しくなっていますが、魚にとっても「すみやすい、きれいな水」になっているそうです。
【山口隆司教授】「きれいかきれいじゃないかは、そこにすむ魚にとって毒であるか毒でないか。(DHSは)魚が出すアンモニアを酸化させて硝酸というものに変える装置。アンモニアの毒よりも硝酸は毒性が100分の1に下がるので、水は魚にとってすみやすい」
錦鯉の排泄物が混ざった水にはアンモニアが含まれていますが、微生物が住んでいるスポンジ=DHSを通ることでアンモニアが酸化され、毒性が低い「硝酸」になります。
【山口隆司教授】「(水質を保つために)薬品を使うと化学的な何か悪いものができるだとか、化学薬品を作るためのエネルギーが必要だったりします。それに比べて、微生物は微生物が汚れを食べて育ったら、また微生物の体ができて、新しい微生物が次の汚れを食べて育って繰り返し使える」
DHSを取り付けた水槽は、最長で600日間水を取り替えなくても魚が元気に育ったということです。微生物を使った水の循環システムは環境にとってだけでなく、そこにすむ生物にとってもプラスの効果があるそうです。
【長岡錦鯉養殖組合 野上久人副理事長】「鯉の動きが違いましたし、えさの食べ方がいつもよりも全然、えさを食べるようになって、より肉が付くようになった」
通常、錦鯉はより大きく育てるため、水槽よりも広い野池などで一定期間飼育しますが、DHSを設置した水槽で飼育した錦鯉はえさをたくさん食べるため、1年間水槽の中で飼育することができます。
【山口隆司教授】「どうして大きくなりやすいかというと、錦鯉が病気にかかりにくくなります。外の水を使うと、外にあるウイルスとか病気を川や海経由で魚にいきます」
去年1年間、野上さんがこの装置を使って育てた錦鯉は、長岡市の大会で見事優勝しました。DHSを使った水の循環システムは、環境にも生物にも良い効果をもたらす優れものですが、課題もあります。
【山口隆司教授】「課題は現在、錦鯉を飼っている業者と仕事をする機会を得るというのが課題」
現在、長岡市の養鯉場でDHSを設置しているのは、まだ2か所だけ。養鯉業者のニーズを把握したり、改善点を洗い出したりして改良するために、もっと多くの施設に使ってもらいたいと考えています。そこで、新しい技術と企業をつなごうと動き出したのが長岡市です。
【長岡市商工部バイオエコノミー担当 斉藤真紀課長】「地元で商売されている方、錦鯉だったら錦鯉をつくられている方がいる中で、その中に地域の課題がたくさんある。その課題を先生方につなげる・出会うことによって、今回の取り組みが生まれた」
行政が専門家と企業の間に入り、課題解決の場を双方に提供しています。こうした自治体と民間の企業の協力は今後、国や世界が一丸となって環境問題に向き合っていく上で非常に重要です。
【長岡市 斉藤真紀課長】「企業は企業で戦うという時代ではなくなってきている。地域の課題と長岡にある技術をうまく結びつける場を、市が設けることによって新しいものが生まれてくる」
微生物を使った水の循環システムは錦鯉の養殖だけでなく、水を扱う様々な分野での活用が期待されています。
【山口隆司教授】「新潟と言えばコメとかお酒とか食とかあるので、食とものづくりを合わせて、新しい産業にしていきたい」
信濃川や阿賀川が流れ、豊富な水資源でさまざまな産業を発展させてきた新潟。地域資源をうまく活用し、地域の課題解決につなげる新しい取り組みに今後も注目です。