新潟医療技術専門学校教授
山本馨

+ + + + + + + + + + + + + + 講 演 内 容 + + + + + + + + + + + + + + +

今、子どもをめぐる問題が多発し地域の教育力が問われています。今回は、地域の中で、自分の子どもだけでなく他の子どもを含めてのすこやかな子育ちができるよう、お互いが支えあうことができないだろかといった話をします。

子どもの育ちが危ない!−子どもをめぐる現代の諸問題―
@子どもの命が危ない
2001年の大阪教育大学付属小事件が起き、その後、学校の安全対策がとられてきました。では地域はどうでしょうか。安全マップを見ると、こんなにも危険な場所があるのかと驚いてしまう一方で、不審者と間違えられるかと思うと声もかけられず、近頃では、子ども達と顔を合わせても挨拶をしなくなった気がします。イギリスでは、子どもの登下校は親の責任で送迎のために渋滞がおきています。日本でもひとたび事件がおき、同じように保護者に責任・安心が求められてくると、今以上に少子化が進み様々な問題がおこるのです。

A子どもの心があぶない
高校生から悩みについてアンケートをとりました。一番多かった悩みは、友人の問題でした。傷つけたくない、傷つきたくない。だから本音が言えず、相手にどう思われているかが気にかかり、友達関係がこわれる事に神経を使い、それがストレスになる。これは高校生だけの問題ではありません。佐世保の大久保小の事件がありましたが、今の小学5・6年の女の子の付き合い方を見ていると、まるで神経戦のようなやり取りをしていて、あの事件のおきる背景が分かるような気がします。想像以上のストレスを抱えているのです。このストレスに耐えられなくて、あるいはストレスを発散するということで、依然としていじめが減らないのです。

B子どもの遊びがあぶない
小・中学生にアンケートで遊びについて聞いてみました。一人遊び(テレビゲーム、まんが、テレビなど)が一番多く、次がおしゃべりでした。12月の寒い季節にとったアンケートなので仕方が無いことですが。他の地区のアンケートでもおしゃべりが上位でした。項目を限定しなかったので、ショッピングも遊びとしてあがっていました。また、保健の先生への調査で、子どもたちの体の様子を尋ねた結果、トップはアレルギーと疲れたという症状でした。なぜ体が疲れるのか。これは、子どもに熱中体験が足りないからです。昼間目いっぱい体を使って遊び、夜ぐっすり眠る。ということができなくなっているからです。夢中になって体を使って遊ぶ体験・経験が必要なのです。おしゃべりでは体を使った遊びにはならないのです。

C子どもの暮らしが危ない
今、どうしようもない生活格差が広がっています。直接的に子どもの学習環境・学習条件にこの生活格差が影響を及ぼしはじめているのです。塾や習いごとに通っている子が多い一方で、1〜2割の子は習い事をまったくしていないのです。格差の問題では、将来への希望の持てる子と持てない子もでてきています。単に家庭の収入が違うというだけでなく、職に就けるか、結婚ができるか、安定した生活ができるか等、将来への希望を失っていく子どもがではじめているのです。もう一つは、家庭の崩壊の中で児童虐待の問題があります。繰り返し虐待防止に取り組んでいますが、功を奏していません。家庭という密室での出来事なので手を差し伸べられず、繰り返し続いているのです。

■問題の背景にあるものは?
この問題の背景の一つは、安全・平等の社会が後退を起こしているからです。家庭・学校・地域社会の安全神話が崩れてきているのです。チャンス・チャレンジの機会すら平等でなくなってきているのです。二つ目には、少子社会の中で子どもは、3間(時間、空間、仲間)を奪われ孤立しているのです。三つ目には、情報化の波に飲まれ、人間関係がゆがみ、一人ぼっちの若者がメディアの中で妄想を持ち、子どもに襲い掛かる性犯罪が増加しているのです。子どもどうし、大人どうし、子どもと大人が疎遠な社会だからです。

■今、子どもにとって必要なものは?
@子どもをめぐる多様な人との関わりによる、子縁の復活・再生が必要です。

A街角に設置された防犯カメラやブザーより、地域住民の協力によるパトロールなど地域の安全づくりをすることです。

B思いっきり遊べる場や、わくわくする体験・経験のチャンスづくりが必要です。ふれあいスクールなど、子どもは場や時間が確保できると安心して思いっきり遊ぶことができます。

C学校生活で悩む子どもと親の声を聞いてくれる、応援してくれる人(サポーター)が必要です。
?家庭の生活格差をうめる支援が必要です。すべての子に自分を成長させる旅をさせることです。旅は、異文化体験・普段と違った生活体験となり、子どもの成長にとって意味があることなのです。


■広げよう!〜子どもとおとなのgoodコミュニケーション〜
@誰でもできる、地域の子育ち支援
子どもを支える活動は、大上段に構える必要はなく、特技がなくても大丈夫、誰にでもできます。そばにいてくれるだけでいいのです。大人は「地域の親」です。

A地域の子育ち支援で、大人が変わる
活動を通じて大人どうしの関係が広がり、人生観も変ります。わが子以外とのかかわりでやさしくなれ、子どもからは元気をもらえます。子どもにかかわることの意義はあるのです。

B地域の子育ち支援で、子どもが変わる
地域の大人がかかわることで子ども自身が変わってきます。疲れた子どもが元気を取り戻すのです。地域の子育ち支援で人間関係や生活経験が広がり、小さな市民としての自覚が芽生えるのです。子育ては家庭だけじゃない、学校だけじゃない、地域の中でできる子育て支援はたくさんあるのです。


■グループワークのテーマ
「地域で子どもとふれあい、感じたこと、思ったこと」


おわりに
発表ではどのグループからも地域協力における運営スタッフ確保が問題になっていました。スタッフで参加される人はコーディネーターと信頼のある係わりを持っている人が多く、人と人とのつながりを大切に活動をすすめることが大事なのです。また、市民の取り組みだけでなくコーディネーターを養成する自治体の取り組みも求められます。 地域活動を進めるときに場が無いという問題もあがっていました。マナーやしつけは集団の場で学ぶことが多いのですが、学校は授業の一環として行い自主的ではありません。毎日の生活で必要なことを学べる場は地域なのです。地域でこの場をどのように提供していくかがこれからの動きです。日々の生活の場所と、非日常的な生活体験をする旅体験などでも学びを補えます。子どもが体験をする居場所を確保するために、なんとしても動きださなければならないのです。 全体を通して子育てに対する安全・安心の問題が共通の関心事だと分かりました。子どもどうし大人どうし地域の顔見知りになること、つながることによって守られる。ここが安全・安心の原点なのでしょう。

【質疑応答】
Q:過去に虐待を受けていた子どもがいます。どう接していけばいいでしょうか?
A:過去の虐待がトラウマになっており、心の痛手をどうやって癒すかが大事です。痛みをしっかりと受け止めること、聞いてあげることです。その上で、安心感を取り戻す必要があります。身近にいる人が、人は信頼できるんだ、信頼していいんだ、信じて欲しいんだというメッセージを送ることです。



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